BLOTCHIP®-MS法

図:BLOTCHIP®-MS法

(参考資料)K. Tanaka et al., A new rapid and comprehensive peptidome analysis by one-step direct transfer technology for 1-D Electrophoresis/MALDI mass spectrometry; Biochem Biophys Res Commun. 379 (1), 110-114 (2009).

私たちは一次元電気泳動から質量分析(MALDI-TOF-MS)に至る工程を簡略化し、大量検体の高速処理が可能なMALDI-TOF-MS用の新しい測定板(BLOTCHIP®)を開発しました。ペプチドの質量分析を妨害するタンパク質や、生体組織からの抽出工程で混入する高濃度の塩類は一次元電気泳動の工程で完全に除去されます。ゲル中のペプチドは電気転写によりBLOTCHIP®へワンステップで写し取られることから、従来法(ゲル内ペプチドの染色、ゲルからの抽出、その後の濃縮・脱塩や測定板への添加)の煩雑な工程を省略した高速ペプチドーム解析法(BLOTCHIP®-MS法)を確立しました。

BLOTCHIP®-MS法の特長1-タンパク質に部分吸着したペプチドの総量解析を実現-

図:タンパク質吸着ペプチド解析法

多くのペプチドはタンパク質などに吸着して存在し、その吸着量はペプチドにより異なります。従って、血液中の総ペプチド量を定量するためには、タンパク質への吸着量に関係なく総量を定量できる技術が求められます。BLOTCHIP®-MS法は、タンパク質に吸着したペプチドと遊離ペプチドの総量を測定できる唯一の方法です。吸着ペプチドはSDS存在下の電気泳動でタンパク質から離れ、遊離ペプチドと一緒にBLOTCHIP®に電気転写されます。その後、BLOTCHIP®上の吸着ペプチドと遊離ペプチドをMALDI-TOF-MSで測定します。

BLOTCHIP®-MS法の特長2-高精度なペプチドーム定量法の実現-

図:BLOTCHIP®-MS法の定量性

妊娠高血圧症候群(Pregnancy-Induced Hypertension syndrome: PIH)の早期診断マーカー候補の一つであるPDA071(分子量 2858.61, α2-HS-glycoprotein(341-367), TVVQPSVGAAAGPVVPPC(+C)PGRIRHFKV)の血中濃度を測定しました。BLOTCHIP®-MS法により得られたピーク強度(縦軸)と、安定同位体標識PDA071を内部標準に使用したSID-MALDI-MS法で測定した濃度(横軸)を比較した結果、両測定値の間に高い相関関係(R2=0.807)が認められ、BLOTCHIP®-MS法の高い定量精度が証明されました。

従来のタンパク質除去がペプチドの回収率に及ぼす影響

図:除タンパク質処理法によるペプチド回収率への影響

従来のプロテオーム解析法では、試料の前処理(除タンパク)が必須であり、そのためにペプチドの数と量が大きく減少しました。これは除タンパクにより、タンパク質と一緒にペプチドの相当数が除去された結果です(A-2)。妊娠高血圧症候群(Pregnancy-Induced Hypertension syndrome: PIH)患者の早期診断マーカー候補の一つPDA044を、除タンパクしない血清(A-1)と除タンパクした血清(A-2)を用いて、BLOTCHIP®-MS法で測定しました。その結果、除タンパクしない血清のPDA044測定値を100%(B-1)とすると、A法で除タンパクした血清では約20%(B-2 左)に、B法で除タンパクした血清では約50%(B-2 右)にPDA044の測定値が減少し、その時の減少率は使用した除タンパク法によって異なりました。除タンパク処理がペプチドの測定値を低下させ、除タンパク処理法の違いが測定値に大きな変動を与えることから、ペプチド研究における除タンパク処理の不要なBLOTCHIP®-MS法の重要性が示されました。

多様なペプチド研究に対応

図:多彩なペプチド研究の受託・共同開発図

BLOTCHIP®-MS法は、バイオマーカーペプチドの開発以外にも広範なペプチド研究に応用されています。

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